12/18 地域で暮らす

本城 圭子 氏  

難しい四字熟語が言えるのに、簡単な日常生活動作ができないというギャップ。
親にもどこの能力がまだ残っていて、どの部分がダメなのかわかりません。

・・・息子が高次脳機能障害となってから23年になります。時々、とんでもない所に行ってしまい迷子になります。心配なので、セコム携帯をもたせて万全を期しておりますが、パニックになると携帯に出ない事、地震が来るとセコムさんも役に立たない事がわかり、介護の方に送迎をして頂くことにしました。今日出来たからと言って、もう明日から大丈夫という訳ではないからです。
ある日、介護の方が
「今日、息子さん、かっこよかったですよ〜」
「ヘェ〜 なんですか?」
「小川駅で降り、国分寺行きを待っていると、お年寄りの3人グループがどの電車に乗っていいのか話し合っておられ、そうだその電車に乗ろう、と決めて歩きだされた。そうしたら息子が1人のお年寄りの肩をたたき、『それは違ってますよ。こちらの電車です。』と、はっきりと教えてあげました。」
というのです。
「まさか!!教えた事、合っていましたか?」
「合っていましたよ。」
お年寄りはお礼を言って間違わずに目的地に行かれました。
迷子になるから介護の方に付いていただいている本人が、人に正しい道順を教えてあげる…不思議でしたが親として嬉しい出来事でした。
当事者家族がオープンにすること。家族が支えるだけでなく当事者に支えられることもある。
…オープンにする事で地域の理解が得られ、当事者も家族も地域で生活しやすくなると私は思うのです。
地域の皆さまからの当事者への声がけをお願い致します。
…わかっている事は、知らない人、知っている人から声をかけられることが好きだということです。勿論返答はしないかもしれませんが、やさしく、温かい声がけをしていただきたいなあ〜と思います。皆さんは、「声をかけたら余計に混乱するのでは」…と思っている方が多くいらしゃいますが、「おはよう」「こんにちは」「元気」「お帰り」の地域の方々の声がけを喜びます。宜しくお願いします。
高次脳機能障害者には市民の見守りや支援・協力が必要です。
…ある当事者のお嬢さんが近くのスーパーに一人で買い物に出かけた時の話です。買う食品を2〜3ヶ書いたメモを持たせました。買い物を終える頃、心配になって外で待っている母親に気付いた近所の方が話しかけてくださいました。「お嬢さんが一人で買い物されてましたよ。品物がどこにあるかと店員さんに聞き、時間がかかりましたが、会計も済まされました。」心配で娘の様子を蔭からそっと見守らずにはいられなかったでしょう。母親に話しかけてくださった方の気持ちに地域の温かいぬくもりを感じました。
また、探している食品がどこにあるか尋ねると、必ずその場まで案内してくれるスーパーの社員教育が、どこのお店でも見られたら、高次脳機能障害者の行動範囲は広がることは間違いないのにと思わずにはおれません。
高次脳機能障害者は、市民の見守りや支援・協力があることで、活動範囲が大きく広がり、地域で安心して生活できるのです。皆さまの理解とご協力をどうかよろしくお願い致します。

 

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